「いくつぐらいからでしょうね、旅というものの目的が変わってきたのは。  若い頃は、見たことがないものを見に行くのが旅の目的だったでしょ。新しいもの、凄いもの、珍しいもの。何でも見てやろう、なんて言葉があった。  でも、社会人になって、仕事に追われるようになると、何も見たくなくなる。むしろ、余計なものを見ないことを目的として、旅に出るようになる。日常からの逃避、という奴だね。  それからさらに、もう暫く経つと、今度は、自分の見たいものを見るために旅するようになる」『ユージニア』恩田 陸著